「すべての人にやさしいまちづくり」を目指し、利用者の立場に立ってバリアフリーの視点で考え、調査・研究・提案をしている市民グループ「おんなの目で大阪の街を創る会」。1993年の発足以来、経企庁長官賞や大阪府知事賞を受賞するなど、その活動は高い評価を得ている。昨年5月には、調査やワークショップを通じて4年がかりで作成した大阪市立天王寺動物園への提案書「大阪市民のオアシスはZOOっとここ!」を発行した。同会の代表、小山琴子さん(56)=都島区在住=に聞いた。
―提案書に対する市民や行政の反応は。
「行政とのパートナーシップ型の提案で、利用者の視点を運営にプラスしていただければと発行しました。全国の動物園から申し込みがあり、すでに300冊ほど売れています。来園者と飼育係がキャッチボールできるノートの設置など、実現した案件もあります。記入者の再来園につながるのはもちろん、飼育係の分かりやすい解説が大好評です」
「動物園はバリアーがあって当たり前の施設ですが、外国では車いす利用者のコースを設けるなど工夫がされています。今ある社会資源をちょっと変えることで、動物園が市民のオアシスになればと考えています」
―外国の動物園はどうなっているのですか。
「例えばスイスの郊外型動物園にはビールやワインを提供するおしゃれなレストランがあり、閉園後もレストランに人が集まっています。ちょっとお酒を楽しめるレストランがあれば、休日の家族サービスとしてだけでなく、ストレスの発散にもなるのではないでしょうか。オープンカフェなら子どもを見ていられるし、若者のデートスポットにもなるのでは」
―「おんなの目」とは。
「『おんなの目』は『利用の専門家の視点』を意味しています。何の専門性もない私たちですが、日々の生活のなかでさまざまな施設や交通機関を利用しています。これを生かして社会とつながり、役に立つことができるのではと考えています。これまでに調査した動物園や交通局の職員はほとんどが男性で、運営に生活者の視点が入りづらいと感じていました」
―街づくりの秘訣(ひけつ)は。
「利用者の、利用者による、利用者のための調査が必要。専門家やシンクタンクがまとめる調査のほかに私たちの調査も盛り込みたいと思う理由は、スピードはないが納得のいくまで調査をしているからでしょう」
―活動持続の原動力は。
「『できる時に、できる人が、できることをする』という市民活動の特性を生かしています。またサポートしてくれる専門家を知り合うことで精神的な充実感を得てエネルギーにしてきました。大阪は専門層が厚い上、(活動を)面白いと思ってくれる人がいっぱいいる。これは大阪人の面白さ、すごさ、素晴らしさ。『ボランティアは自分のためにしている』というのは偽善的だと思っていましたが、今は心からそう思います。これも11年続けていればこそ。継続は力なりですね」
<記者ノート>
小山さんは目標を「無理をせず、昨日と同じように明日もそれを続けること。無理をすると活動が続かない」と語る。自分のペースを大切にしているその姿勢からは、専門家などのサポーター陣が「気持ちの良い人たちの集まり」と会を評す理由が伝わってきた。(渡辺真理子記者)
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